KEITH APE
- MC
- HIP HOP
Kid Ashの名でソウルを拠点に活動をしていたKeith Apeは、韓国アンダーグラウンドシーンで絶大な支持を集めているクルー“The Cohort”のメンバーであるOkasianによって見いだされ、同クルーに加入。加入当初からクルーの最年少でありながらメンバーからは”天才”と称されるほどの実力と存在感を放っていた。
そして韓国のレーベルHI-LITE RECORDSと契約した時に現在の名前に改名。幼少の頃からキース・ヘリングに夢中だった事からキースという名に洗練されたイメージを持ち続けたKeith Apeはその名を拝借。そしてその“洗練”されたイメージの反対の意味を持つ言葉として猿人類(APE)を選び現在のKeith Apeの名は完成したという。
レーベルに加入した事で金銭面を気にせず楽曲制作に打ち込むことがでできるようになったというKeith Apeは、より精力的に活動を開始。また、ラップだけではなくMVなどのアートディレクションでもその才能を発揮。YouTubeに投稿された楽曲“Hot Ninja(Hot Nigga Remix)”のMVでは、その卓越センスを披露した。
韓国のアンダーグラウンドシーンでその存在感を示し始めたKeith Ape。その運命を大きく動かしたのは一本のMVだった。自らの楽曲“It G Ma”(イッジマは韓国語で“忘れるな”の意味)のMVをYouTubeに投稿。同楽曲にはThe Cohortのメンバーである韓国のラッパーJayAlldayと Okasian、そして日本からは Loota、 Kohhも参加しており、それぞれが素晴らしいラップを披露。
マッコリを片手に顔面をマスクで覆ったKeith Apeがホテルで大暴れするこの強烈なMVは投稿されるや否やたちまちインターネット上で話題となった。
そして日韓の架け橋となったこの楽曲にいち早く反応をしたのがアメリカのヒップホップファン達だった。実は“It G Ma”という楽曲とMVの構成がアトランタのラッパーOG Macoの“U Guessed It”を明らかに参考にして作られたものであったからだ。
「俺の真似をしている韓国人の事なら知っているよ。いいとは思わないし、関心しない。ダサイね」。“It G Ma”のMVを見たOG Macoは自身のツイッター上でKeith Apeについて言及した。こうした経緯も手伝い“It G Ma”のMVはアメリカ国内で大きな物議を呼ぶこととなった。そしてネット上には「Keith ApeはOG Macoのワナビーだ」というような書き込みが多く書かれた。しかし、激しく糾弾するファン達とは裏腹に、OG Macoの非難の先はどうやら自らの楽曲を真似した事ではなかったようだ。「俺はビデオの中で、グリル(歯のアクセサリー)を付けたり、デカいジャケットを着たり、リーン・カップ(パープル・ドリンクというドラッグを入れるカップ)を持ったりしていないのに、彼らはなぜそれらを使ったんだ? 黒人のステレオタイプじゃないか」とコメントしている通り、OG Macoの非難の先は、黒人音楽(ラッパー)のステレオタイプのアイテムばかりを使う事が偏見であり、差別行為に発展するという危険性にあった。それを証明するかのように、OG Macoはテキサス州で開催された<サウス・バイ・サウスウエスト>に参加するためにアメリカを訪れたKeith Apeと邂逅している。ファン達による加熱する議論に終始を打つために「俺が戦っているのはシステムであり、この男ではない」というコメントと共に中指をカメラに向かって立てたKeith Apeとの写真を投稿した。
そしてOG Macoとの邂逅を果たしたKeith Apeはニューヨークへと移動し、伝説となったニューヨークの老舗ライブスペースSOB’sのライブを決行。韓国語のリリックを大合唱するステージ前の光景には驚かずにはいられない。Keith Apeのラップはアメリカのヒップホップシーンを確実に揺らしたのだ。
ニューヨークでのライブを成功させたKeith Apeは、後日MVの撮影を敢行している。ファンサービスも兼ねてソーホーで行われた撮影には多くのファン達が集結。さらに興奮したファン達と共にソーホーを集団で練り歩くという予期せぬハプニングにより、辺りは一時騒然なった。またネット上にはASAP Fergとの2ショット写真もアップされるなど、話題を集めた。
現在、凄まじい活躍ぶりを見せてるKeith Ape。“It G Ma”は、韓国と日本だけでなく、アジアとアメリカの架け橋となっている。